東陽会トップページ > 検査のご案内 > 乳がん(乳癌)Q&A
A1. 日本における乳がんは、欧米に比べれば罹患率(乳がんにかかる割合)や死亡率とも先進国の中で最下位でした。しかし増加傾向は緩やかながらも右肩上がりで、亡くなられる方も年々増加してきています。2000年は約34,000人の方に乳がんが発生し、約9,200人の方が乳癌のために亡くなられました。になられましたが、2015年には48,000人の方に乳癌が発生し、約11,500人の方が亡くなられると推測されています。
A2. 女性の死亡原因で、特に30〜64歳で乳がんはトップです。乳がんとなるピークは50〜60歳後半であり、その年齢より前の40歳になったら、乳がんになりやすい年齢になったと自覚して、定期的な検診を受けましょう。
A3.左右差はありません。場所は外側の上部が最も多く、約45%。ついで内側の上部が約25%です。ただし、どの場所でも発生する可能性はあります。また、乳房の大きさとは関係ありません。
A4.乳がんに気づく大部分の方は乳房のしこりとして見つかります。痛みの大半は、乳がんとは関係のない良性の病気です。ただ、40歳代で発見されたしこりの8割は良性で、多くは乳腺症です。しかし、自覚症状で判断することは危険で、良性腫瘍の中には、検査をしないとわからない微妙な病気もあり、乳腺専門の医師を受診することが大切です。そのほかに、くぼみ、ただれ、皮膚の変化、乳頭からの分泌物、わきの下のしこりに注意が必要です。
A5.しこりが見つかったら、マンモグラフィと呼ばれるレントゲン検査、超音波検査を行います。マンモグラフィ検査は乳房専用のX線撮影です。立体的に乳房全体をとらえるために、上下、左右からはさんで2方向から撮影します。超音波検査は探触子(プローブ)を乳房にのせ、超音波を出して乳房の断面図を画面に出します。いずれの検査も触ってもわかりにくいしこりを見つけることが出来ます。
A6.マンモグラフィ検査は乳房を圧迫板というものではさんで撮影します。この圧迫で痛みを感じるかもしれません。しかし、立体的によい写真を撮るためには重要で、圧迫することで放射線を受ける量を少なくすることが出来ます。超音波検査に痛みはありません。
A7.マンモグラフィ検査、超音波検査と自己検診ではわからない乳がんを見つけることの出来る優れた検査です。しかし、若い女性や授乳中、術後の人、以前に乳腺に炎症を起こした人、乳腺濃度が不均一な人ではしこりを発見できないことがあり、完全ではありません。このような方は何もないときとの比較を行うことが重要で毎年定期的に検査を受けることが大切になってくるのです。また、最近では画像診断の進歩により、CT(コンピューター断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像)検査を診断に用いることが出来るようになりました。
A8.超音波検査やマンモグラフィ検査によって乳がんの疑いがある場合、さらに詳しい検査が必要になります。しこりに直接注射針をさしてその細胞を採取して調べる"細胞診"検査と呼ばれるものです。針を刺すので痛みを伴いますが、良性か悪性かを調べるうえで非常に大切な検査です。入院の必要はなく、外来で受けることが可能です。約2〜5日間で結果が出ます。
A9.乳がんは比較的ゆっくり進行するといわれています。早期に見つけて、正しい治療を行うことで完治することが可能です。乳がんと診断されたら、大きさや、わきの下のリンパ節、他の臓器(肺、肝臓、脳等)、骨への転移の有無からがんのステージを調べます。そのステージに応じて治療を行います。
A10.乳がんの治療の基本は、手術でがんを切除することです。しかし、手術だけでなく、乳がんの治療法にはいくつかの選択肢があります。化学療法(抗がん剤)、放射線、ホルモン療法、そして手術の4つの治療法を組み合わせ、ひとりひとりのがんの特徴にあわせた治療を行います。自分の病状、適応できる治療法をきちんと理解し、医師との相談の上、納得できる治療を行いましょう。
A11.しこりの部分を中心に、乳房を部分的に切除する手術が基本となります。乳頭や、乳輪、乳房のふくらみを残すことが可能です。手術は2時間程度で終わります。ただし、乳房内のがん細胞の広がりが大きい場合や、がんのタイプによっては乳房全体を切除する手術を行うことがあります。 また、乳癌では発見時点でほかの臓器へ転移しているかが今後の経過に重要であり、乳癌が最初に転移するわきのリンパ節へ転移があるかないかが特にキーポイントです。
A12.乳癌は、がん細胞が乳房だけにとどまらず、早い時期から全身に広がっていると考えられています。このため、手術の段階ではすでに全身へがん細胞がとんでいる場合があり、抗がん剤によってがん細胞を破壊し、増殖を抑えることが必要となることがあります。また、最近では手術前に行うことにより、今まで乳房全体を切除する手術が必要であった方に、がんを縮小させ、部分切除を行うことが可能となりました。
副作用として吐き気、頭痛、脱毛、白血球の減少などが起こりますが、副作用を抑える薬を一緒に使うことで、大幅に軽減できるようになっています。
A13.乳がんの中には、女性ホルモンの影響を受けやすいタイプのものがあります。このタイプのがんにはホルモン剤(抗エストロゲン剤など)が非常に有用で、がんの増殖を抑えることが出来ます。のぼせ、不正性器出血といった、いわゆる更年期障害のような副作用が出ることがあります。
A14.手術で取りきれなかった恐れのある場合にがん細胞を破壊することと、再発を防ぐために放射線治療を行います。特に乳房温存手術を行った場合、手術後残った乳腺に放射線をかけることで再発率を4分の1以下に下げることができます。放射線量は厳密に決められていて、照射した瞬間に消えてしまうので、体内に残存する心配はありません。副作用は皮膚炎、かゆみ等がありますが、半年〜1年で目立たなくなります。
A15.以前はわきの下のリンパ節を全部とる手術が主流でした。しかし、わきの下のリンパ節を全部とることによる副作用も深刻であるので、センチネルリンパ節生検を行っています。この方法により、無用なリンパ節をとることなく、正確に進行度の判定ができるようになりました。
A16.腕のむくみ、しびれ、運動機能障害などの後遺症が出ることがあります。
乳癌、乳房のしこり、ただれ、違和感、リンパの腫れ、その他症状が気になられる方はまず、診療・検査をお勧めいたします。
(日本乳癌学会会員・マンモグラフィー精度管理中央委員会認定読影医 東 和子)